秘密の恋愛
2017/08/10
当時の私は24歳、離婚して1、2年ほど経った頃でした。子供も小さく、とにかく働かなくてはいけなかったので、隣町にある会社の事務員として働き始めました。幸い、子供の保育園の送り迎えは両親がやってくれていたので、私は仕事に専念することが出来ていました。
しかし働き出して間もなく、私は会社の社員であるAさんに恋をしてしまったのです。Aさんは2つ年上で容姿こそまずまずでしたが、性格も優しく明るいのでみんなから慕われていました。その上声がとても素敵で、正直その声の良さにやられてしまいました。しかし私は子持ちのバツイチ。「私が恋愛なんて……」と諦め、想いを封印していました。
そんな状況が一気に変わったのは、私が彼に告白をしてからでした。仕事がきつく会社を辞めようと思っていて、「どうせ辞めるなら告白して辞めよう」と決心し、思い切って彼に告白をしたのです。すると、なんと彼は元カノと寄りを戻したばかりとのことでした。
失恋決定……のはずでした。でも「彼女と上手くいってない」「告白されて嬉しい」などと言い出し、彼もまんざらでは無い様子。私も重い女だと思われたくなくて、時々一緒に遊んでくれる程度でいいと申し出ました。
結局今度一緒に遊びに行こうと約束を交わし、私たちの関係がスタートしたのです。
会社を辞めることを思いとどまった私は、毎日会社で彼に会うのが嬉しくてたまりませんでした。誰もいない階段で話をしたり、アイコンタクトで合図したり……。誰にも言えない恋ですが、それがまたスリリングというか、気持ちに火をつけていたように思います。
最初の頃は、休みの日に子供連れでドライブデートをしていました。子供にも優しく接してくれたので、はたから見たら普通に家族に見えていたと思います。それが段々平日に2人だけで会うようになり、ホテルに行ってとうとう一線をも超えてしまいました。元々会社の終わる時間が遅かったので、早く仕事が終わった日は大抵ホテルに行っていました。
子供や両親に対して後ろめたさもありましたが、それよりも幸せの方が大きかったように思います。2人でいる時は、母親という立場から離れて1人の女性になれるのですから。女性である幸せを、彼は私に思い出させてくれたのです。
もはや彼が彼女と会う時間など無く、私とずっと会ってくれていました。彼女よりも私を選んでくれていたのだろうと思います。半年後、結局彼と別れることになりましたが、その原因は私の性格にありました。彼や彼女が原因ではありません。
今でも思い出すとキュンとしてしまいますが、誰にも言えない私だけの大切な思い出です。